敷金トラブルの裁判例
敷金返還をめぐる裁判例をご紹介します。ほとんどの事例で、借主側が勝訴しています。
敷金返還請求訴訟 その1
東京地裁 平成6年7月1日
概要
敷金24万円 契約は合意解除の上、建物の明け渡しを終えたが、畳みの張り替え費用249,780円を請求された。本件契約には「借主は貸主に対し、契約終了と同時に本建物を現(原)状に回復して明け渡さなければならない」という特約があった。
判決
本件特約における原状回復という文言は、賃借人の故意、過失による建物の毀損や通常でない使用方法による劣化等についてのみその回復を義務づけたとするのが相当である。本件においては賃借人は本件建物に居住して通常の用法に従って使用していた。従って本件契約における原状回復には当たらないとして、敷金の全額である24万円の返還を命じた。
敷金返還請求訴訟 その2
東京簡裁 平成7年8月8日
概要
敷金33万4千円 本契約には「明け渡しの後の室内建具、ふすま、壁紙等の破損、汚れは一切賃借人(借主)の負担において現状に回復する」という特約があり、この条文に基づき、敷金を返還しなかった。
判決
建物賃貸借契約に原状回復条項があるからといって、賃借人は建物賃貸開始当時の状態に回復すべき義務はない。賃貸人は賃借人が通常の状態で使用した場合に時間の経過に伴って生じる自然損耗等は賃料として回収すべきものであるから、原状回復条項は、賃借人の故意・過失、通常でない使用をしたために発生した場合の損害の回復について規定したものと解すべきである。壁についた冷蔵庫の排気跡や家具の跡、畳みの擦れた跡、網戸の小さい穴については、10年近い賃借人の賃借期間から見れば自然損耗と言え、飲み物を絨毯にこぼした跡、部屋の家具の跡等については、賃借人が故意・過失または通常でない使用をしたための毀損とは認められない。以上から入居期間中に破損した襖張り替えに要した費用1万3千円を差し引いた32万1千円の返還を命じた。
敷金返還請求訴訟 その3
東京簡裁 平成8年3月19日
概要
敷金31万 本契約には「賃借人は明け渡しの際、自己の費用負担において専門業者相当の清掃クリーニングを行う。」という特約があり、貸主はクリーニングと補修を行い、27万6820円を差し引き、3万3720円を返還した。
判決
建物が時の経過によって古び、減価していくのは避けらず、賃貸人は原価の進行する期間、それを他に賃貸して賃料収入を得るので、賃貸借終了後、その建物を賃貸開始時の状態に復帰させる事までを要求するのは、当事者の公平を失する。本件特約は、賃借人の故意、過失に基づく毀損や通常でない使用方法による劣化等についてのみ、その回復を義務づけたものとするのが相当である。本件について、賃借人の故意・過失による毀損や通常でない使用による劣化等を認める証拠が無い。 として敷金31万円全額の返還を命じた。
敷金返還請求訴訟 その4
横浜地裁 平成8年3月25日
概要
敷金21万4千円 新築マンションの賃貸契約 約6年後に合意解除借主の使用により46万9474円の工事代がかかり、敷金を返還しなかった。
工事内容
・ 畳6畳の裏返し
・ 洋間カーペットの取り替え
・ 洋間・食堂・洗面所・トイレ・玄関の壁と天井の張り替え
・ 網入り熱線ガラス二面張り替え
・ トイレ備え付けタオル掛けの取り替え
判決
洋間・食堂・台所・洗面所・トイレ・玄関の壁と天井の張り替えはカビの発生によるものであり、他の部屋には発生していない事から見ても賃借人の手入れにも問題があったと推測でき、この取り替えについては妥当である。
カビについては賃借人に2割程度の責任が認められ、修繕費15万2千円のうち約3万円について負担すべきである。 以上により敷金21万4千円から3万円を差し引いた18万4千円について返還を命じた。
敷金返還の基礎知識(目次)
- 敷金トラブルについて
- 敷金・保証金について
- 原状回復義務について
- もっと知りたい方へ



